つもる話

あさひ ゆひ

恋しくて切ない想い・こいしい たべもの

 ガス会社のアンケートに答えたら、抽選で当たる景品の500円分クオカードが送られてきた。

 おっ!ラッキー!と思ったものの、クオカードって大阪だとあんまり使えるお店がない。大雑把に書くとコンビニと書店でしか使えないギフト券。コンビニで買い物なんかほとんどしないし、どないしようかな?と思っていた矢先、前回取り上げた森下典子「いとしいたべもの」に続編があることを知りました。

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 ちょうどええわ。というわけで、すぐさまクオカードを使える近所の書店の在庫を調べ、足りない分の差額を払って手に入れてきたのがこちら↓

こいしいたべもの (文春文庫)

 前回の表紙はメロンパン。今回はホットケーキ。焼きあがったホットケーキの側面のぷつぷつとした気泡まで描かれ、四角いバターととろ~んとお皿にまで垂れたシロップがなんともうまそぉな表紙。これ見ただけで、表紙から香ばしくて甘ぁぁぁい香りが立ち上ってきそう。わくわくしながら読み始めました。がしかし…。前作と同じく食べ物が鮮やかに描かれてはいるものの、なぜだか今回は飛び出してくるものが食べ物ではなく、森下典子さんの想い出アルバムというか、家族との食卓が浮かび上がってくるような感じがしました。
 浮かび上がってくるのは、欠けることなく食卓につく一つの家族が、楽し気に食事するいくつもの場面と、欠けてしまった家族や知人につながる切ない想い。特に「父と焼きビーフン」というお話は、お父様が亡くなられて10年ほど過ぎた頃に気づいたお父様の心の傷の深さについて描かれていて、読み終わった後で切ない気持ちになりました。思えば、こういう切ない気づきって、ある程度の年齢に達しなければ、なかなか感じられない「想い」なんですよね。私も、あの時はわからなかったし気づけなかったけれど、今想えば「しまった。あの時に気づけていれば、もう少し思いやりのある態度で言葉を言えたかもしれない」ということが50歳半ばを過ぎた頃から山ほどあります。時にはその気づいた想いに対する後悔で心がつぶされそうになることも…。しかし、こうも思うのです。「その時その時に一生懸命自分の人生を生きてきたからこその今こういう想いに気づける私があるんだ」と。おいしい食べ物は、いとしくてこいしくて時には切ない想い出と共に人生に刻み込まれていくんだなぁ。